時間はいつから進むようになったのだろうか。
時計の針が止まっても、たとえ電池を抜いてしま
っても、時間が動かなくなったことは、一度もな
い。風を生み、風に揺れる草花を生み、土に眠る
蛹はやがて陽に舞い、河の流れは絶えることなく、
けれど決して元のままではないと歌われた。時間
が進まなければ歴史は生まれず、人々の心は交わ
らず、音楽が流れることもなかったのかもしれな
い。そう考えると、私たちは時間のマリオネット
なのかもしれない、とも思う。
けれどときどき、時間は溶解する。ちょうど私
達が、紺碧の空に吸い込まれたり、夜の潮に誘わ
れたりするように、溶け出したそれは、彩に目醒
め、音に包まれ、香りの中をただよって、時を超
える夢をみる。夢の刻は点になり、点は空になり、
たゆたう波のように、いつしか回帰する。
音をまとうとき、なぜか私はいつも、そんなこ
とを感じている。
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